自社株買いの株価が上がる仕組みとその罠
株主への利益還元としてよく企業が実施する政策としては配当金を上昇するということと、自社株買い(自己株式の取得)があります。
一般的には自社株買いを行うと株価が上昇します。
しかし、なぜ上昇するのでしょうか?そもそも自社株買いとはどういうことなのでしょうか?
今回は自社株買いについて書いていこうと思います。
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自社株買いとは?
そもそも自社株買いとはなんなのでしょう?
意味はその名前の通り、「企業が自分の会社の株を購入すること」です。
企業は利益を求めて活動しています。その活動が調子いいと、当たり前ですがどんどんお金が内部留保(現金)として貯まっていきます。
自社株買いとは、この貯まったお金を使って自社の株を市場から購入することをいいます。
ただ企業が株式を購入しただけでは、発行済株式総数に変化はありません。金庫株として企業がその株を保有するだけです。
自社株買いには「消却」と「処分」がある
企業は自社株買いを行ったあと、その株をどうするかの2択に迫られます。
それは消却か処分です(厳密に言うと金庫株として何年も保有し続けるという選択もありますが、最終的には消却か処分の二択になります)
消却は購入した株式を文字通り消してしまうことです。
この株式は発行済株式総数からも減ります。償却した分を再び戻すとなるととても大変です。
一方、処分は金庫にしまっていた株を再び市場に流すことです。
処分をするということは、株を売却するという方が分かりやすいかもしれませんね。
要は、自社株買いによって購入した株を再度売却しているわけです。
資金が欲しい時に、金庫株を処分して運営資金にするということがよくあります。
長期投資家としては、企業が自社株買いしたその先(その株を償却したのか処分したのか)にも注目する必要があります。
償却してくれたのであればかなり嬉しいです。
処分だったら、自社株買いしてから処分するまでの間一時的に嬉しいが結局はプラスマイナス0という感じになります。
どういうことなのか説明致します。ステップとしては3段階に分かれます。1ステップは自社株買いする前。2ステップは自社株買いした後。3ステップ目は買った株式を消却した場合と処分した場合に分岐します。
どういうことなのかそれぞれのステップで具体的に見てみましょう。
具体的な数値で考えた方が分かりやすいので、以下のように数値を設定します。
純利益が100万円あり、金庫株が全くないA社という企業(株価は2,000円)があります。
その企業は1万株の発行済株式総数があって、純資産は1,000万円あり、5%の500株を自社株買いして消却したとします。
これを三段階に分けて考えます。
ステップ1:自社株買い前
自社株買いをする前のA社の1株あたり純利益は100円です。
(計算式:100万円÷10,000(株)=100円)
PERは20です。
(計算式:株価(2000円)÷1株当たり純利益(100円)=20)
ROEは10%です。
(計算式:1株当たり純利益(100円)÷1株当たり純資産(1000円)×100=10)
ステップ2:自社株買い後
自社株買いをした後を考えましょう。
A社の発行済株式総数に変化はありません。発行済株式総数に変化があるのは消却をした後なのです。
しかし、このうちの500株は金庫株となっています。1株当たり純利益を計算する際、金庫株は計算に含めないので、計算に有効な株式数は1万株から500株を引いた9,500株となります。
つまり自社株買い後のA社の1株あたり純利益は105.3円です。
(計算式:100万円÷9,500(株)=105.3円)
PERは19.0と20から少し下がりました。
(計算式:株価(2000円)÷1株当たり純利益(105.3円)=19.0)
純資産は500株の自社株買いを実施するのに100万円使用したので、残りの資産の純資産は900万円です。
1株当たり純資産は947.4円になります。
(計算式:純資産(900万円)÷9,500(株)=947.4円)
よってROEは11.1%です。
(計算式:1株当たり純利益(105.3円)÷1株当たり純資産(947.4円)×100=11.1)
これを見て頂ければ分かると思いますが、PERとROEはどちらも株主にとって嬉しい方向へいっています。
これが自社株買いは株主還元策と言われている理由です。
指標が良くなるので、自社株買いを行ったA社の株が注目されるようになり、株価が上昇するのです。
ステップ3:消却と処分
ステップ3は金庫株を消却する場合と処分する場合に分かれます。
消却
消却すると500株の金庫株が完全になくなります。
つまり、ここで初めて1万株だった発行済株式総数が9,500株へと減少します。
他の数値はステップ2と同様であり、PERは下がったままですし、ROEも大きくなったままです。
嬉しいまま自社株買いが終わったと考えることができます。
処分
しかし、処分となると話が変わってきます。
処分は金庫株を市場に流し売ることです。
株価は変わらないものと考え、500株を1株2,000円で売却できたとすると、9,500株だった計算に有効な株式数が10,000株に逆戻りします。
また、純資産も1,000万円に逆戻りです。
つまり、ステップ1と同じ状態になるのです。もちろん指標も元通りです。
話を分かりやすくする為に、株価等を一定で考えると全てが元通りになるので、自社株買いをしても処分だとあまり嬉しくないのです。
嬉しい時間はステップ2までの間で一時的なものなのです。
なので、自社株買いも消却なのか処分なのかは気を付けた方がいいですね。
さいごに
いかがだったでしょうか?
自社株買いによって株価が上がる仕組みと自社株買いの罠について理解していただけたでしょうか?
自社株買いと処分を繰り返すことにより、気付いたらぬかよろこびさせられているかもしれません。
自社株買いは嬉しいものですがそういった企業の動きには注意して下さい。
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